素材:書道半紙

サイズ:W2000×D2000×H2500mm

 

 私の制作っていうのは、終わりがない永遠と成長し続ける物体なんです。 この制作は書道の練習の日々をかたちにしてみました。私の趣味は、書道なんです。といっても、大して上手くはないんですけど…。それでも、毎日書いていると、少しづつですけど上達してくるものなんです。そんな練習の課程で出てくる描き終わった半紙を巻いていきました。自分と共に日々少しずつ大きくなる半紙の渦。これがなかなか見事なんです…^^

WORKS-03「書1」

『継続』

 自分が何かを習得したくなる時はどんな時なのかって考えると・・・。劣等感に駆られて、必要に迫られて、興味があって等、様々だと思います。例えば、一生懸命勉強している受験生がいる。スポーツなどで非常に過酷な練習に耐えている人がいる。一生懸命働きながら資格試験に挑んでいる人がいる。また、まったくそのような事に興味がない人でも、テストの成績や周りの目くらいは気になる。しかし、人は何故そんなに習得したいのだろう?

 最近の私、めちゃくちゃ書道にはまっているのです。たいした理由はありません。ただ文字を綺麗に書けるようになりたいと、急に思えてきたのです。制作の為でも自己主張の為でもないのです。 実は私、文字を書くのが猛烈にヘタクソなのです。だけど気にした事はなかったのです。文字など読めればいいと思っていたし。小・中・高・大学生時代なんら支障もなかったのです。ワープロも普及していたし、例え日本には文字という芸術があろうとも、私には何の関心もなかったのです。

 そんな日々の中で、いつもは文字など汚くてもいいと思っているくせに、芳名帳を前にすると少しでも上手に書いてやろうなんて、図々しくもそう思っちゃったりするのです。そして、何故か「字が汚い」って言われると、とっても頭にくるのです。

 この前、知り合いの高校生に「あすかさんの書く字って小学生みたいですね。」って言われたのですよ。無性に腹が立って、家の近所で村一番の書道教室に通い始めたのです。しかも、「一般コースじゃなくて、小学生コースから始めたいのです。」と先生にお願いして、小学生に混じって教えてもらっているのです。だけど、小学生だと思って侮ってはいけません。みんなやけにうまいのです。かといって小学生に負けるわけにはいかないので、子供相手だとはわかっているのだけれど、本気で書道しちゃったりしているのです。家でだって影錬しているのです。もう、部屋中書き損じの半紙だらけになったって構わないのです。努力だとか根性だとかそんなカッコイイものじゃないのです。見栄だとか自分の為でもないのです。ただ上手に文字が書ければいいのです。

 そんなこんなで、毎日、墨と紙に塗れていたら「そろそろ書道検定でも受けてみては・・・・。」と先生に薦められて、師範の道を目指すことにしました。ちょっと動機が不純ですが、いいのです。私は字が上手くなりたいのです。そんな練習用の半紙を、習い始めてからずーっと書くたびに巻いていきました。

 たまに独りになると考えることがあるのです。人間は、日々生活していく中で目には見えなくても、形には残らなくとも、生きるという連続行為の結果、変化し続けている生き物なのだと思うのです。生まれてから大人になるまで、何の影響も受けず、また何の影響も与えずに生き続ける人などいないのです。目的を持って行動しようとする日々も、ただ何となく過ぎ去る日々も、すべて今の自分を形成する為にあるのだと思うのです。書道を始める前の私と、その後の私は外見じゃ全然変わらないのですが、明らかに内面は違うのです。どんどん上手くなっていくのです。あえてその変化の過程を作品化してみたのです。  この制作は、書道を始めたときから練習で使った半紙を集積してきたものです。制作の目的は、最終的に達成するある地点を目指すものではなくって、あることを「継続」することによって、変化する自己を取り巻く「時間」の表現なのです。書道を継続すればするほど、半紙の渦は大きくなります。私も大きくなるのと一緒に作品も大きくなっていくのです。時間と経験が増せば増すほど、練習の渦は大きくなっていくのです。制作ってそんなものだと思います。一時だけ頑張って作っておしまいじゃつまらないのです。一生をかけて創るのです。だから、今もなお練習しているのです。